相変わらず、部屋が荒れている。

乾かないと分かっていてする洗濯は自傷行為のようで気が引ける。

食生活も荒れていて、顎のできものが一向に良くならない。

高いシャンプー(の試供品)を使っているおかげか、髪だけは調子が良い。

アイスはやめていて、こんにゃくゼリーを凍らしたも食べたりしている(リンゴ味が一番おいしいと思う)。


***


へとへとになって、Tさんの家へ。明日は休みだ。

ご飯を食べさせてもらう。

「食べさせてもらう」は、「振る舞ってもらう」と「介助」のダブルミーニング

鶏肉とキノコのクリームシチュー的なものと、ご飯、たっぷりのサラダを用意してくれていた。

お風呂も入れてもらい、頭も身体も洗ってもらった。髪も乾かしてもらう。

お姫様抱っこでベッドに運ばれ、掛布団をふぁさぁ~と掛けてもらった。即寝。

10時間眠って起きると、隣にTさんがいたので、ぎゅぅっと抱き着く。

「おはよう」

「おはよう。なんか久しぶりに声聞いたな」

「ははは、そうかも。しゃべる元気もなかった」

「昨日のサキちゃんは、ちょっとエロい大型犬みたいだった」

「あんなにボロボロなのにエロを感じてくれるのか、ありがたいことだ、犬だけど」

「疲れ切ってるのって、なんかいいんだよね、犬だったけど」

「犬が疲れ切ってるのは、ちょっとかわいそうだけどね」。

小さなウサギを二匹、飼う夢を見た。

名前は「ちゃ」と「うすちゃ」だった。なかなかいいと思う。

***

友達と食べたメキシコ料理がとてもおいしかった。

上司にキレかけた。

髪も肌も、顔も、調子が悪い。

4年ぶりに、部屋にゴキブリが出た。

疲れ切って感覚が鈍っているのに感じた視線、その持ち主がゴキブリだった。

「ニヤニヤ」という擬音がつきそうな表情で、こちらを見ていた。

***

通勤途中の信号待ちで、板ガムを取り出して食べている人がいた。

板ガム…!…久しぶり!じっと見てしまっていたらしく「板ガム、珍しいですよね。食べます?」と言ってくれたので、ありがたくちょうだいした。

信号が青になり、2人して板ガムをむしゃむしゃしながら横断歩道を渡る。

「お姉さん、いつもこの時間ですよね」

「あ、はい」

「ときどき見かけます」

「そうでしたか。毎日ひどい顔してるでしょう」

「いやいや、ショートが似合ってるなぁって」

「あ、嬉しい。ありがとうございます。じゃ、また」

「じゃ、いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」。

板ガムの人は地下鉄の駅に向かい、わたしはそのまま歩いて職場に行った。

もともと忙しい時期なのだが、更に毎日対応が必要なトラブルが起きた。

ものすごく忙しい。家に帰って寝るだけの日々。

自傷としての意識すらない、つまらないマクドナルドや面白味のない牛丼が続いた。

むくみがひどく、目は細い。分かりやすくジーンズがきつい。

当然、洗濯掃除もままならない。

「泥棒が入ったあとのような部屋」という表現があるが、これでは足りない。

「狂犬を連れた泥棒が入ったあとのような部屋」である。

久しぶりに休み、しかも連休が取れたので、たっぷり眠り、とりあえず洗濯をするが、その最中にも眠くなってしまう。

何度かのうたた寝をはさみながら、4回洗濯をした。

シンクに溜まった食器も洗い、もろもろ整え終わったのは夜中だった。

ごみ捨てついでにスーパーに行き、牛乳とパン、豆腐を買う。

冷凍してある白身フライがあるのを思い出して、レタスとキャベツも買った。おいしいフィレオフィッシュもどきを作ろう。

 

 

 

板門店を見てみたくて、初めて韓国へ行った。

5月中は日本人の訪問が禁止されていて、久しぶりの解禁だったらしい。

いろいろ思うことがあった。

「旅行が好き」という人のメンタルに強い憧れがある。

日常を愛しているというよりも、執着があり、そこから離れることが不安。

行くまではかなり憂鬱だが、行ったら行ったで腹をくくるのは早い(と、自分では思う)。

転校生だった反動だろうか。

誰となら旅行に行けるだろう。

●●●なんて、すぐにわたしのことを置いていきそう。

 

***

 

「Tさん、昨日1人でしたの?」「した」「変態っぽいね」「サキは気付いてないだろうけど、おっぱいに出したよ」「え。全然気づかなかった」「ふっふっふっ」「変態じゃん」「変態というか痴漢?」「自分で言うんだ」。

Tさんと久しぶりに会えた。

遅めのランチをして映画を見、ネットで予約したスニーカーを引き取り(受け取りが限定店舗のみってハードル高い…)、友達がやっている雑貨店に顔を出し、散歩もし、その間2回くらいお茶もした。

なんならTさんは「いつか欲しい」と言っていた家電を「今」買った。「家電を一人のときに買う勇気、僕にはない。センスがないの分かってるもの」。

夜は近所でラーメンを食べた。正直、二人ともヘトヘトである。

「今日の我々はなぜにこんなにアクティブなの…?」「久しぶりに会えたからって、いろいろ詰め込み過ぎではないだろうか」「特に家電」「特に家電」。

Tさんの家に帰ってお風呂に入ってビールを飲んで、ベッドに倒れ込む。

Tさんも同じように倒れ込んきて、「こんなに疲れているのにエロいことがしたい…!」と言う。「猛者かよ」。

身体は動かないが反応はする。一方的に触られていかされまくった。そしてきれいにフェイドアウトして寝た。

Tさんはわたしの寝姿を見ながら一人でしたそうな。変態かな?

 

 

Tさんの仕事は朝5時頃に終わり、12時まで一緒に眠った。

起きた途端に「今日は欲望の日にする!睡眠欲、クリア!」と言い放った。

「次、食欲!美味しいもの食べる!」「うん」「あそこのパンが食べたい」「○○○?」「そうそう」「ちょうどランチやってるね。行こう行こう~」「うん」。

Tさんはシャワーを浴び、わたしは洗面所で歯を磨いて顔を洗い、コンタクトを入れる。

日焼け止め効果もあるおしろい乳液は、こういう時に便利だな。


「食欲って言ったんだけどさ」「うん?」「エロいことがしたくなりました…」「うん」。

いつもは割としゃべるTさんが、珍しく無口だった。それがとても色っぽくて、可愛い。

それを本人に伝えると、「ふぇっ…余裕がなかっただけだけど…ありがと」と素直な反応。Tさんは大人だなぁと思う。

セックスにおける「可愛い」を受容できるのは大人だ。Mにはなれるのに、単純な「可愛い」を受け入れられない男の人って、意外に多いと思う。



「ランチの時間、終わっちゃったね」

「提案です。高くてうまい蕎麦屋に行き、てんぷら蕎麦を食べたいです」

「はい。いいと思います。わたしは鴨せいろにします」

「いいと思います。そしてお肉屋さんとスーパーに行きます」

「はい」

「カルディに行き、トマト缶を買います。」

「お?!はい」

「今日の夜はカレーにしようと思いますがいかがでしょうか!」

「賛成」。