おっぱいがものすごく張っているな、と思っていたら予定より一週間早く生理が来た。
毎月股間から血を流すのがデフォルトという自分の構造に「へぇ、やっぱそうなんだね?」という感情が伴っていない相槌みたいな感想が浮かぶ。
いつか自分のお腹の中に誰かがいると分かったときにも、わたしは「へぇ、やっぱそうなんだね?」と思うんじゃないだろうか。
Kさんと、わたしがむかし付き合っていた人の話をしていた。
「別れてよかった〜」
「向こうもそう思ってるよ。みんながそう思って生きればいい」。
「次会うとき履歴書書いて持ってきて、面白そうだから」とか本気で言ってくる気狂いのくせに、ときどき、正論の向こう側みたいなものに気づかせてくれる。
Kさんのそういうところが好きなんだと思う。
仕事でミスが発覚し、久しぶりに頭をフル回転。
どうにか一日で事態を収束させたが、頭の毛根が焼き焦げる匂いがした。
わたしがしている仕事は「臨機応変」が求められる、というか「臨機応変」しか求められない。
基本性質としては変化を恐れるタイプなのに、この仕事をしていることを不思議に思う。これには父の影響を感じざるを得ない。
各方面にお詫びの電話やメールをし、同僚たちに「本日分の社会性は終了しました」と告げ、事務所の端っこで甘いものを食べた。
***
Kさんとのやりとりは続いている。
大喜利じゃなく、普通のやり取りもするようになってきた。
「1回しか会っていないのに、なんでこんなに懐いてくれるかねぇ」
「1回しか会っていないから、もっと会いたいだけですよ。なんだかんだで、Kさん相手してくれるし」
「好きなんだろうなぁ」
「お、わたしのこと好きですか」
「割と」
「うん、で良くないですか? スクショの邪魔しないでもらっていいですか?」
「スクショにはなんの効力もないです」。
「今はまじめな人ほど先のことを考えて悩んじゃうだろうね」
「わたしはKさんに会える日だけを考えているよ、かわいいでしょ」
「あなたのその熱が怖いんよ、熱しやすく冷めやすいんじゃないかって」。
お、本音が出た、と思った。思ったが、ここで一から説明するのも野暮な気がした。
「これが平熱です」
「……病気やん!」。
*
順序良い恋愛というものが存在するならば、わたしはそれをしたことがない。
こんなに夜が悪く言われた一年があっただろうか。
わたしは夜が好きなので、世界に夜が戻ることを、なんならちょっと長くなって戻ってくることを期待している。
生活が続くように、夜は続く。
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この年末年始、一度だけ気が狂いそうになっただけで済んだ。
安定しない世界観の中、孤独が可視化され、自己責任ばかりを求められる。
気が狂わないほうがおかしいとも思うが、こんな状況でも「会いたい」と「会いたい」が合致している人たちはたくさんいる。
わたしはくっきりと一人だな、と思う。
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毎年、実家に帰るついでに吉祥寺へ寄り、パルコ2階の近江屋から「年末」を眺めるのを恒例にしていた。
あの細長い紙袋はワインかな、あれは東京ばななじゃないか!すごく急いでいるけれど新幹線やばいのかな、ぼんやり思うのが好きだった。
友達が合流して、付き合ってくれた年もあった。
今年は実家に帰らないし、近江屋ももうない。
近所のシャノアール(地下)でハムとチーズのプレスサンドを食べた。目の前の席には、わたしと同い年くらいのお父さんとその娘(3歳くらいかな)が座っていて、ヨーグルトドリンクを飲んでいた。
2020年、年末。
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年始、さつまいもをレモンティーで煮て荒くつぶしたものと、あんこを白玉にのせて、ほうじ茶と一緒に食べた。
2021年、お正月。
ぎゅうぎゅうに仕事を納めて、近所のカフェへ。こちらも年内営業最終日。
「作りたいものを作りたいときに作って食べさせてください」と言って美味しいものをたくさん出してもらった。
わたしは夜が好きなので、世界の夜が戻ることを、なんならちょっと長くなって戻ってくることを期待している。
生活が続くように、夜は続く。