「やり逃げ保険には入ってる?」「え、お金ない!」「……払う方の立場なの?」「あ、いや、分かんない。また会いたいし」「ここに来て乙女かよ!」
ひどい会話、楽しい。はからずも「また会いたい」という本音が出て照れてしまった。

大学でゼミが一緒だった友人たちとご飯。下北沢で会う予定が急遽豪徳寺になったので小田急線に乗った。
適当に入ったお店で、ウニの載ったピザや、じゃがいものニョッキ、おしゃれに調理した枝豆。
「自分では作らないものを食べたい」。……だよね!
明日は遠足だという保育園の先生に合わせて、早めに解散。もともとは夜の蝶だった彼女が、いまや完全なる朝型人間だ。


いいタイミングで近くに住むDさんから連絡が来たので、おうちにお邪魔した。
コーヒーと、出張先のベルギーで買ったというチョコレートとウエハースのお菓子を出してくれた。
「サキちゃんは優しくて可愛いビッチだから」って、褒めているつもりのDさんも、褒められたと思っているわたしもおかしい。
ソファでうとうとしてしまう。部屋を少し暗くして、ものすごく高そうなふわっふわのブランケットを掛けてくれていた。
「なんもしてないよ。意識のないサキちゃん抱いたって、つまんないもん。いや、別の楽しみはあったか、惜しいことをした」。
そう笑いながら、今度は熱い紅茶を入れてくれたDさんは、大人だなぁと思う。
いまわたしが誰かと密室で二人きりになっても、傷つく人も怒る人も嘘をつかなくてはいけない人もいないけれど、Dさんのことを傷つけていたらどうしよう。うぬぼれかな。


世田谷線の終電で帰る。
住宅街に響く、ガタンゴトンという音が「失恋・ばかり・してると・馬鹿に・なるよ」と言っているような気がするなんて、やっぱりアタマがいかれている。