夜中に「なにしてますか?」とメールが来て「うちでダラダラしています」と返信した。40分後には待ち合わせをした駅改札でハグをし、数時間後にはOさんの部屋でおいしいブドウジュースを飲んでいた。Oさんと最後に会ったのは2年前で、2人で会ったのは初めてだ。
メールは、居合わせたお客の将来の夢を聞かされ、それがつまらない上に失敗するところしか浮かばず、話に飽きてしまった、と続き、ひと段落したところで、「話を戻します」と、冒頭の「なにしてますか?」「うちでダラダラしています」というやり取りメールのスクリーンショットが送られてきた。なにこのやり方。
「一緒に飲みませんか」「はい、向かいますね」「緊張してきた」「なんで」「会うの、ほぼ初めて でしょう」「あぁ、そうか。顔、分かりますかね。赤いマフラーしていきますね」。

連れて行ってくれる予定だった面白いママのいるお店は臨時休業で、バーと居酒屋をはしごした。お互いのことをほとんど知らないわたしたちは、ベロベロになりながらいろいろな話をした。わたしが好きになる人にしては、クリーン過ぎるなと思っていたのだが、やはりちょっとアレな人、だった。自分の目の狂いのなさよ。
Oさんはわたしの分のお酒を「オールモスト水で」と注文し続けた。

2件目から3件目に歩いているとき「こういうときさ、なんか面白い話をしろよとかさ、意味のない道を歩かせるなとか思ってるでしょ」「いやいや、そんなこと思ってないし」。
4件目か5件目でホッピーを飲みな がら「うちにとてもおいしいブドウジュースがあるの」「うん。ワインじゃなくて?」「ジュース」「うん」「来ない?」「うん、行きましょうか」。

Oさんの部屋はとても居心地がよかった。紙とレコードとCDとお酒がたくさんあったような気がする。セックスはしなかった。その方がいいと思ったからだ。

次の日のお昼、Oさんから来たメールには「駅前で、赤いマフラーの女の子を見つけたときが昨日のハイライト」と書いてあった。