小説を読み返してもさみしさが軽減されることはなかったが、写真集にはその効果があるようで、毎日のようにページをめくっている。
そこに彼がいるから。

中には見たくない写真もあった。見覚えのある部屋の見覚えのあるソファに、笑顔で(“無邪気”と恥ずかしげもなく表現できるような)座っている女の人。それだけは、毎日見ていても毎日泣きたくなってしまう。
そこにわたしがいないから。

わたしがどこかにいることを、彼はもう忘れてしまっているだろうか。