家から一番近いヴィレッジヴァンガードが閉店セールをしている。閉店、とても悲しい。
半額になっていたヒグチユウコのマスキングテープと、白熊モチーフのコースター、仕事で使えそうなサコッシュ、たなかみさきとマムちゃんの手ぬぐいを買った。

スーパーで割引になっていた、いわし明太を買う。
"他人の卵を腹に詰められている食べ物"だと思うと感慨深い。「こんなはずじゃなかった」と言っている声が聞こえる。

***

Oさんから「何かあった?いま電車だから降りたらかけ直すね」とメールが来た。
わたしは電話がとても苦手で、滅多にかけないし出ない。
Oさんのことがとても好きなので、念で着信を残してしまったのかと焦ったが「サキちゃん違いだった!」。
「お店のサキちゃんだった。思い切り営業の電話だった!」とのことで「あぁ、可愛い方のサキちゃんだったんですね」と返信した。
「もっと可愛い方のサキちゃんは元気にしてる?」と重ねてきたOさんはさすがだと思う。

今年2回目の逢瀬。
Oさんの友達のお店へ行き「お腹すいてる?」と聞いてもらってメニューにはないカレーなんて出してもらっちゃって「表の看板ひっくり返してきてくれる?」なんて言われて、常連ぽさに照れ笑いしてしまう。

「サキちゃんをあのバーに連れて行こうと思うんだよね、やってるかなぁ」「あ、あそこはまだやってますね。僕は仕込みがあるのでお二人で行ってください」。


風にあたりながら10分ほど歩いたところにあるバーはものすごく素敵で、Oさんが「薄ーく、あ、今考えた倍の薄さにしてください」と注文してくれた桃のカクテルがものすごく美味しかった。Oさんと飲むお酒が一番おいしい。
「さっき、僕の友達、普通に一緒に来ようとしてたよね!」「はははは。いいじゃないですか別に」「やだよ!」。

「最近ね、自分がつまらないと思うことにもしかしたら価値があるのかもしれない、つまらないなぁと思う人と付き合うことで見えてくるものがある気がしてるんですよ」
「それは…サキちゃんの面白さが浮き彫りになって絶望するだけでは」。

「和菓子を丁寧に丁寧に撮る仕事をしたよ」。

わたしたちは手をつなぐことも、キスをすることもなかった。
帰り道、わたしの家に寄って一杯飲みたい、みたいなことを言われたような気がしたが「わたしが次の日休みの日にしましょうね」と返した。
セックスをしないでいたい、と思える関係は初めてだと思う。
Oさんのことがとても好き。