『テネット』のこと、『催眠と不在証明』のこと、ボタンを押す30秒前から録画が始まるという最新のカメラのことを考えていた。
わたしはこの世に存在するのだろうか、なんて一瞬思うも、家賃、電気ガス水道代、各種欲望の代償金を支払って、物体としての自分を感じざるを得なくなって絶望した。
わたしが存在するように、多分あなたも存在するのだろう。
わたしの存在を認識しないあなたなど存在しなければいいのに。

別部署で関わりはないがいつも面白い企画を出す人がいて、思い切って話しかけた。後日、妻子持ちだと知って、軽くうなだれる。
この年齢になり、いいなと思う人は結婚していることが増えた。
ナチュラルに「なぜわたしを待っていてくれなかったんですか」と聞きそうになって、めちゃくちゃヤバい自分に笑う。
もしわたしが存在していないのなら、すべて説明が付くなぁと思いながら、スフレパンケーキを食べてきっちり太って存在が増す。