Kさんと、わたしがむかし付き合っていた人の話をしていた。

「別れてよかった〜」

「向こうもそう思ってるよ。みんながそう思って生きればいい」。

「次会うとき履歴書書いて持ってきて、面白そうだから」とか本気で言ってくる気狂いのくせに、ときどき、正論の向こう側みたいなものに気づかせてくれる。

Kさんのそういうところが好きなんだと思う。

仕事でミスが発覚し、久しぶりに頭をフル回転。
どうにか一日で事態を収束させたが、頭の毛根が焼き焦げる匂いがした。
わたしがしている仕事は「臨機応変」が求められる、というか「臨機応変」しか求められない。
基本性質としては変化を恐れるタイプなのに、この仕事をしていることを不思議に思う。これには父の影響を感じざるを得ない。
各方面にお詫びの電話やメールをし、同僚たちに「本日分の社会性は終了しました」と告げ、事務所の端っこで甘いものを食べた。

***

Kさんとのやりとりは続いている。
大喜利じゃなく、普通のやり取りもするようになってきた。
「1回しか会っていないのに、なんでこんなに懐いてくれるかねぇ」
「1回しか会っていないから、もっと会いたいだけですよ。なんだかんだで、Kさん相手してくれるし」
「好きなんだろうなぁ」
「お、わたしのこと好きですか」
「割と」
「うん、で良くないですか? スクショの邪魔しないでもらっていいですか?」
「スクショにはなんの効力もないです」。

「今はまじめな人ほど先のことを考えて悩んじゃうだろうね」
「わたしはKさんに会える日だけを考えているよ、かわいいでしょ」
「あなたのその熱が怖いんよ、熱しやすく冷めやすいんじゃないかって」。
お、本音が出た、と思った。思ったが、ここで一から説明するのも野暮な気がした。
「これが平熱です」
「……病気やん!」。

順序良い恋愛というものが存在するならば、わたしはそれをしたことがない。

赤べこを作る工房の人の言葉。
「ほんとさりげなく(置いてあるもの)、埃をかぶっていてもいいと思うんです。民芸品ってそういうもの。美術品とは違うので」。
心に深く深く深く刺さって、泣いてしまった。
こういう美学(というか何と言ったらいいんだろうか)に、本当に弱い。
それプラス、わたしは"分かりやすく大事にされたがり過ぎなんだな"という内省が生まれ冷や汗も出た。
美術品と民芸品、どちらが上ということはないし、一番目につく場所にいるあの子も、いつの間にか存在し埃をかぶっているあの子も、等しく愛おしいのは分かっていたはずだった。
うまくまとまらないけれど、この言葉は一生心に残ると思う。
赤べこ買おう。

美容院へ行った。
わたしが長めにとお願いするときはモテようとしているときだな。
それでも少年感は否めないが、数日経ってとてもいい感じになった。
今!今!わたしに会うなら今ですよと思いつつ、二人きりで会おうと口説くわたしvs常に塩対応のKさんという感じで大喜利みたいなやり取りが続いていた。
何があったか、Kさんが会おうと言い出し、予定を合わせていたところでの緊急事態宣言。
わたしはともかくKさんの仕事のことを思うと会うのは難しい。
Kさんは内心ホッとしたのではないかという疑念が捨てきれず、少し泣いた。

こんなに夜が悪く言われた一年があっただろうか。
わたしは夜が好きなので、世界に夜が戻ることを、なんならちょっと長くなって戻ってくることを期待している。
生活が続くように、夜は続く。

***

この年末年始、一度だけ気が狂いそうになっただけで済んだ。
安定しない世界観の中、孤独が可視化され、自己責任ばかりを求められる。
気が狂わないほうがおかしいとも思うが、こんな状況でも「会いたい」と「会いたい」が合致している人たちはたくさんいる。
わたしはくっきりと一人だな、と思う。

毎年、実家に帰るついでに吉祥寺へ寄り、パルコ2階の近江屋から「年末」を眺めるのを恒例にしていた。
あの細長い紙袋はワインかな、あれは東京ばななじゃないか!すごく急いでいるけれど新幹線やばいのかな、ぼんやり思うのが好きだった。
友達が合流して、付き合ってくれた年もあった。
今年は実家に帰らないし、近江屋ももうない。
近所のシャノアール(地下)でハムとチーズのプレスサンドを食べた。目の前の席には、わたしと同い年くらいのお父さんとその娘(3歳くらいかな)が座っていて、ヨーグルトドリンクを飲んでいた。
2020年、年末。

年始、さつまいもをレモンティーで煮て荒くつぶしたものと、あんこを白玉にのせて、ほうじ茶と一緒に食べた。
2021年、お正月。

ぎゅうぎゅうに仕事を納めて、近所のカフェへ。こちらも年内営業最終日。
「作りたいものを作りたいときに作って食べさせてください」と言って美味しいものをたくさん出してもらった。
わたしは夜が好きなので、世界の夜が戻ることを、なんならちょっと長くなって戻ってくることを期待している。
生活が続くように、夜は続く。

ありきたりなことを言うようで申し訳ないが、いやもはや申し訳なくなんかない、どんどん言っていくべきだ。職場の年上男性部下とうまくいっていない。
本社から飛ばされてきた人である程度覚悟していたが想像の5倍くらいやばかった。いろんな本を読み、どこまで出来るか探って実践し、あぁわたしはすごく「仕事」をしているなぁという実感があった。しかしこのままだと自分がつぶれると確信し、離脱を試みている。

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自分の気持ちにフィットしないことに対してはスルーをするタイプの人とやり取りするのはしんどいな、と感じる出来事があった。
それは図々しさとも言うのだろうな。

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わたしはこんなにギリギリを攻める女だったろうか、というくらいお金がない給料日直前。