お互い様だということをついつい忘れてしまう。
自分の価値を他人に丸投げして、査定を待つばかり。
わたしだって誰かに対してしてきたことなのに、渦中にいるとそのことを忘れて堂々と悲劇のヒロインになってしまう。
そのことに気づかせてもらって、だいぶ楽になった。
「顔」「体型」「おしゃれ」にコンプレックスが強くて、そこを好きになってしまうと完全にアウトなんだよな。
勝手ながらの負け試合をしてしまう。

久しぶりにご飯が食べられなくなった。
顔が少しだけシュッとしてきた。

可愛くなって世界征服したい。あの人から連絡が欲しい。

片想いが楽しかったことなんて一度もない。両思いになって毎日毎日ベロチューしたい。

久しぶりにミスタードーナツを食べたくなってミスタードーナツを買った。
分かりやすく胃もたれを起こし、自業自得の手本のようだと思ってちょっと誇らしくなったのち、身体を丸めた。

***

今まで、出会って間もないのに自分の話が多めの人に対して「この人は潜在的にわたしに興味がないのかな」と感じていた。
でも興味ありそうなことも言うしなぁと単純に疑問で、オブラートに包んで聞いてみたところ「申し訳ない、そうではない。自分のことを知って欲しいという気持ちが強く出てしまった。サキさんにはめちゃくちゃ興味あります。知りたい気持ちはあるのですが、それよりも先に自分のアピールをしておかないと間に合わない!と焦っていました」とのことで、こういう気持ちをきちんと言葉にして伝えてくれるのはすごいなと感心したし、ものすごく納得した。
わたしはついつい話を聞く側にまわりがちで、それは職業的なこともあるけれど、自分のアピールという点では確かに足りていないだろう。
「よく話を聞いてくれる人」ということ以外は印象に残りづらい。わたしがなにが好きかということは、現時点で彼には伝わっていないのだから。
これは2020年、一番の気づきではないだろうか。

今まで、そうやって「わたしに興味ないんだろうな」と判断してきた(主に)男たちのことが頭に浮かんだ。
心の中で「話を聞いてほしいだけならキャバクラに行ってくれよ」と悪態をついたこともあった。もちろん実際「誰でもいい」という(主に)男もいただろうけれど、「あれはアピールだったんだ」とはっきり分かった(主に)男もいた。

この気づきをくれた男の子とは、きっと長い付き合いになるだろう。

Mくんは「数学のできる犬」だ。
理系男子と仲良くなれたのは珍しく、次に会ったら『テネット』を解説してもらうのが楽しみ。
初めて会ったときはサカイのスウェットを着て、マルニの靴を履いていたので「服飾費のかかる犬だね」と言った。
「ワインも嗜みます」
「いい加減にしろ、犬」
「でも自分でお金を稼いできます。おうちでサキさんの帰りを待つこともできます」
「それは……えらい」。

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美容院へ行った。
いつもより短めにしてしまい、なんつうかもう、全然学ばないよな、わたしは。

別部署同い年既婚男子の奥さんと話す機会があった。
「Sさんが家に帰るとあの人がいて、同じ冷蔵庫を開けたり閉めたりしているんだね」と同僚に話したら「犬端さんの気持ち悪いところが出ましたね」と真顔で言われた。

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イレギュラーで担当していた仕事が終わった。
経験値ではどうにもならないしこの状況だしで、どうしたものかと考えた結果「丁寧に丁寧に丁寧にやる」という当たり前のことでしか対応できないと悟った。
総じて楽しい仕事だったが、凶暴な大型犬が滞在しているように部屋が荒れた。そのうちその犬さえも飼い慣らし日々支え合うようになった。
かろうじてお風呂には毎日入っていたが、何度もリンスインシャンプーを買うか迷った。口元の吹き出物はなかなか治らなかった。

久しぶりの休日。洗濯を5回、シンクに山積みになった食器を洗った。掃除機をかけ、クイックルワイパーをかけ、ゴミをまとめた。
件の大型犬は、ベッドの上ですやすや寝ている。毛並みも良くなっている。「あとで一緒に散歩に行こう」と声を掛けた。

 

昨日、初めて「アクセス数:0」だった(と思ったらバグだったようだ)。ネットの海でも人知れず沈んでいく感覚がすごい。落ち込むこともないけれど「そうかぁ」という感想。


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Tさんから久しぶりにリクエストがあって、いなり寿司を作る。すし太郎を買ってきて、市販のいなり揚げに詰めるだけだが、なんだか気に入ってくれている。
今日は温かい蕎麦と一緒に食べた。

そして、心中みたいなセックスをした。

職場に限界を感じている。
ローカルルールが多すぎて、5年ほど勤めてやっと感覚が掴めてきたところだけれど、上司のあり得なさが加速していて追いつけない。
出来ることが増えていくのが、嬉しくない。「損している」という思考になってしまうのが悲しい。
労働力の搾取、というのはこういう風に起こるんだな。

Tさんは「じゃぁ、辞めちゃえば」とは絶対言わない。そういうところが好き。
「じゃぁ、辞めちゃえば、って言ってもいい?」とは言う。そういうところが好き。

医療ドラマが好きなのは、どうしたって「身体」が関わってくるからなのかもしれない。

久しぶりに胃カメラを飲んだ。
鎮静剤を使用しない場合はモニターで自分の胃の中をリアルタイムに観察することができるというので迷わずそちらを選択。ものすごく面白くて、ずっと見ていたかった。
終わった後「面白かった…です…」と呟いたら、医師と看護師に「はぁっ?!」とびっくりされた。
わたしが痛みに強いのと、病状が深刻なものでないから「面白かった」と言えるのであって、幸せなことだと思った。