この街のファミリーレストランに、初めてひとりで入った。

元恋人とは深夜の散歩がてら、コーヒーを飲みに行ったり、パフェを食べに行ったりしたものだ。

あの時間を懐かしく思う。分かりやすく自由で幸せで、小説にもなりやしない時間だった。

ぼそぼそした白いご飯と鍋底の味がするお味噌汁、油と添加物でギトギトのハンバーグに、いろどりの為に生まれ死にゆくコーン、それぞれにとどめを刺すように食べる。

「わたしはここにいないな」という感想の食事は久しぶりで、ちょっと笑ってしまった。

大学生カップルの会話に耳を傾ける。

「残しちゃうかも」「大丈夫だよ、俺が食べる」「じゃぁこれにするー」と頼んだメニューが品切れで(品切れってあるんだ。まぁ、あるか)、結局彼女はピザを注文。

「ピザかーい!」と彼氏が突っ込み、二人は大爆笑。

大爆笑の意味が知りたくて、全神経を張り巡らしたが、まったくわからなかった。

考えうる状況としては「昨日もピザだった」だろうか。

ピザカップルは、このあとセックスをするのかな。いいないいな。人間っていいな。

 

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来週、友達が家に遊びに来ることになったので、少しだけ掃除。

とにかく服を捨てたいが、どれもこれも、まだ違和感なく着れるものばかり。

大学時代の友人たちに会ったときにも話題になったが、わたしは「好きなもの」が変わらなさすぎる。

運命の黒の丸首ニットを探し求めて20年。結論としては「己が痩せればすべて解決」。

やはり捨てるべきは、一番大切なもの。自分を捨てないと、なにも片付かないのだ。