体調はだいぶ良くなってきたものの、肌荒れと髪のまとまらなさに悩んでいたら、誕生日から一ケ月が過ぎていた。
リボンで包まれた箱のようなものも、花束も、もらっていない。
蝋燭が刺さったケーキも食べていないので吹き消してもいない。
以前のわたしなら、死にたくなるくらいに傷ついていたと思う。いまは「そうだろうよ」という気持ちだ。
わたしは一人だ。どうしたって一人。このまま死ぬのだろうか。「そうだろうよ」。
憂いもなくそう答えている自分は、あんまり可愛くない。
それでもやっと、現実を見られるようになってきた。
部屋の物を減らしたい、身軽になりたい。体重を減らして、好きな服を着たい。
努力で何とかなりそうなことに地道に挑戦していくしかないのだ。一人だからこそできることがある。

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斜め下の部屋に住んでいた男の人(たぶん)が引越しをした。
当日、結構な悪臭がするので何事かと思ったが、犬を飼っていたらしい。全然気づかなかった。
30年、住んでいたそうだ。わたしが8才の時からあの部屋に、と想像したら気が狂いそうになったので、その人も気が狂って引っ越したのかもしれない。