デニムジャケットのポケットが破れていたので縫ってあげた。
自分の痕跡を物理的に残していいものか、「しかも針と糸ってなんか…」と迷ったが、
とても気に入っているものだと言うので、これ以上破れないようにと思って。
「また破れたら、縫ってもらいに来ますね」なんて、いい話すぎやしないだろうか。小説にもできやしない。
わたしは物語を、言葉を信用しすぎている。
自分が主人公でなければ、何の意味もないのは知っているよ。もう大人だから。
ここには本当のことなど、何も書いていない。