夕方の渋谷を、手をつないで歩いた。
わたしは左脚があまり良くないので、歩くのが微妙に遅い。
横断歩道の信号が点滅し始める。Dさんはわたしの顔を見て「渡るつもりで(行こう)」と言った。やめとこう、渡らなくていいよ、無理しないで、などとは言わない。そういうところがとても好きです。そう言う代わりに、手を強く握り返す。
「Dさんはわたしのどこが好きですか」「ムチムチしてるところ〜」「……は?」「嘘です。嘘じゃないけど」「……は?」「顔と体と声が好き」「心は!」「サキちゃんはそう言っても喜ばないでしょう」「……でも宮崎あおいがCMで言ってるよ、心と体、人間の全部!って」「あおいのことは知らんがな」。
Dさんはわたしのツボ を、というよりも女のツボを心得ているような気がする。本当に本当に恐ろしい。この人のこと、やっぱり嫌い!