すべりだい

自分に自信がなくて疎遠になってしまった人や、仲良くなりそびれた人がいる。
勇気を出して連絡をして、やり取りが復活した人もいる。
嫌いになったり嫌われたりして会えなくなった人もいる。
気が狂う前に眠る、を繰り返していた37年だったが、今年はなんだか違った。
起きている時間が増え、いままで関わってくれた人たちのことを思っていた。
日記ばかりが長くなり、毎年書いている遺書にも力が入る。
どちらも欲望を遠心分離器にかけたあと、それっぽく見える加工を施しているけれど、
結局は「さみしい」「ちやほやしてほしい」「20キロ痩せたい」ということが書いてあるだけだ。
椎名林檎にもなれず、本谷有希子にもなれず、谷亮子にもなれず、わたしはここにいる、と書いたのはKだった。あぁKにも会いたいな。
自分のことを特別だなんて、ただの一回も思ったことはないけれど、キチガイなのも変態なのもバレてなくてえらいねぇと褒められて「そうでしょう」と頷いたあと激しく落ち込み、カフェインレスのコーヒーを丁寧に淹れてみる。わたしの正気はポイント制だ。
そういえば近所にできるブルーボトルコーヒーに、カフェインレスコーヒーはあるんだろうか。
窓の向こうに見えるカラスが漫画みたいに「かぁ」と鳴いて、今日が始まっていることを知る。
カラスはきっといつだって正気だし、黒くてつやっとしていて、とてもかっこいい。
あの人は、元気かな。