Tさんと2020年、初散歩をした。
大きめの公園までゆっくり歩き、途中ローソンでホットコーヒー(メガサイズ)と濃厚チョコレートアイスを買った。
公園のベンチに座って、あまり元気のない噴水と、散歩中の犬と人を眺めた。
好みの犬が通ると、わたしとTさんは顔を見合わせる。Tさんは雑種の犬みたいな顔をしている。
素敵な服装の人や、良い雰囲気の人が通ると、手をぎゅっと握る。
「あのくらいの髪色にしようかなぁ、明るすぎ?」「いや、いいんじゃない、黒い服着てることも多いし、冬場ならなおさら」「なるほど、その視点はなかった」。
「やっぱりこないだ悩んでたスニーカー買ったら?」「俺も思った、あのお父さん見て思ったでしょう?」「そうそう」「あぁいう風に履けばいいんだね」。



スーパーへ行き、あれこれ購入。
帰宅して一緒に豚肉と大根の煮物を作る。Tさんが実家から圧力鍋(新品)をもらってきたのだ。
説明書を読みながらセットし、昼寝をきめた。
「いますっごいしたいんだけどさ、姫はじめってことになるじゃない」「あ、そっか」「だから夜まで我慢する」「なんで」「長期戦でいきたいから」「えー今しようよ」「うん、する!」「意志よわ!」。
耳なし芳一を思い出すようなセックスだった。
わたしはキスをされたところ以外は悪魔に持っていかれる呪いにかかっていて、Tさんはそれを必死に解いていたのかもしれない。
自分の輪郭をはっきりと認識し、決してひとつになれないことを憂いた。
憂いは湿り気を呼んできて、泣きながらTさんにしがみつく。Tさんは子供をあやすようにわたしを犯し続けた。



圧力鍋で作った煮物は、とても美味しかった。
「鍋使ってるところ、お母さんに写メしたら?」「そうか、そうだね」「うん」「サキも入って」「うん」「……鍋の販促みたいだな」「褒めてる?」「褒めてる」。